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* Diode Ring (bridge)
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KORGやYAMAHAの初期のVCF/VCA回路に使用されたdiode ring (bridge) による電圧制御可変抵抗器について考えます。下図はその基本構成です。 この回路はdiodeを可変抵抗として利用するのが特徴ですが、その対称的構造により audio信号系に対して差動増幅回路の電流取り出し的な動作(逆位相の電流を差動AMPで受けて1っとする受け方)が可能となり、 制御電圧の変動に対する Audio信号源側でのDC offset変動を軽減することができます。 またaudio信号に対して差動構造 最終出力は逆相MIXされる形になる(下図のD2とD5を流れる電流間で)のでdiodeを可変抵抗として利用した場合の非線形歪み(非対称歪み)が軽減されます。


・Diode Ring(VCF用..VCA用はD3/D6が抵抗)


この回路の基本はdiodeによる ANALOG SWです。ANALOG SWを以下に示します。


* ANALOG SW回路

<左の回路>
Vcvを十分プラスにするとDiodeがONする為 Vsig(交流信号)がOUTに向かって流れこむ。 Vcvを十分マイナスにするとDiodeがOFFする為Vsigは流れない。

<右の回路>
Vcvpを十分プラスにするとともにVcvmを同時に値が同じなマイナス電圧にすると各diodeがONしOUTにVsigが現れる。 Vcvpを十分マイナスにするとともにVcvmを同時に値が同じなプラス電圧にすると各diodeがOFFしOUTに信号は現れない。

左の回路の方がシンプルですがこの回路では制御電圧(ON/OFF信号)の直流分が出力に出てきてしまいますし直流を入力にすることはできません。右の回路はその欠点を補ったものです。ANALOG SWは単に信号のON/OFFを制御するものですが電圧制御可変抵抗器として機能させるためには制御信号を連続可変させます。


Diode Ring

 
* DIODE RING VCF core           DIODE RING VCA core

上図に VCFに使われる diode ringと VCAに使われる diode ringを示します。 Vsig印加、Vcvの値が上昇して各diodeが活性化していくとOutポイントに電流が流れ始めます。Vcvが大きくなるほどdiodeの微分抵抗は小さくなるので出力電流は増えていくことになります。この場合Vcvはdiodeに対するバイアス電圧 となりそこにVsigが重畳される形になります。この回路はdiodeという2端子の素子を使っていますがAUDIO信号源と制御信号源入力が明白に分離されています(*1)。

 *1:回路図上は分離されているように見えるが動作上は分離されていない。
  CVの制御電流が定電流源であれば分離される。



基本原理

上図に diode ringの基本原理を示します。 入力 AUDIO信号 0V時各 diodeには CVの印加で発生した電流が流れ対応した動作点にバイアスされています。

 * 制御電圧CVPに印加される電圧とCVMに印加される電圧は同じ値で極性を逆とする。

上記回路は 2っD1,D3 , R1の回路と D2, D4, R2の回路に分割して考えると、差動回路の差動ペア+定電流源によく似た回路であることがわかります。 すなわちRに流れる電流を簡易定電流源とみなし diodeの両端子を トランジスタのベース、エミッタとみなせば diodeに流れる電流はコレクタ電流、コレクタ端子がVccもしくはVeeにつながるかわりにここでは GNDにつながり上記2回路は特性の逆な回路。 ここでは上記の簡易定電流源を定電流源とみなして考えます。

トランジスタの差動回路との違いは Tr.はVbeの変化に対してIcの変化が主体になるためIbのことはあまり考えませんが、diodeの場合はIbに相当する部分がIcと同様の役割となるということでしょうか。

AUDIO信号0V時、各diodeに流れる電流値を5とすると定電流源には10の電流が流れこの10と言う値はAUDIO信号の印加では変動しない、また上記回路において AUDIO INと OUT端子は2っの回路で共通の端子であり、AUDIO信号が0V時、 両ノードに流れる電流は両回路での電流値に同じ方向が異なる電流によって相殺されて0であるということです。

D2、D4とD1,D3のペアdiodeに AUDIO信号として印加される電圧は差動ペア回路と同様に両者の微分抵抗の値によって分圧比が決定され、ペアdiodeにおいて電圧方向が反転しているので両者に対しは逆相になります。 さらにはRによる電流を定電流源とすればdiodeに流れる電流の分流比はdiodeの微分抵抗値によって決まるということです。

上図にAUIDO信号をプラスに上昇させた時の電流の変化を示します。 D1とD2の交点にAUDIO信号が印加されているのでD2の両端子電圧は上昇、逆にD1の電圧は下降します。 よってD2に流れる電流が増加するのでその分D4に流れる電流が差動的に変化して低下します。 D1、D2ペアにおいてはD1電流が減り、D3電流は増加しこの変化量もD2、D4ペアと同様の関係になります。

この時のAUDIO OUTと INの電流は AUDIO IN=0V時+5-5=0で相殺されていたものがプラス方向では3増えて、マイナス方向では3減っているのでマイナス側は反転してプラス側に足したのが答えなので6になり、片側のペアdiodeの変化を2倍したものが出力されることになります。 

これらの反応はPASSIVEな差動回路のようなものでそれらの回路でVCAは構成されるということでもあります。 差動回路ベースのVCAと同様、定電流源の電流値を変えることが VCAのゲイン、この回路の場合は減衰度を変えることになります。

さらに言うと差動増幅回路において出力を差動で取り出すためにはOP AMPなどの差動回路がもう一組必要になりますがこの回路はその要素も含んでいます。

ちなみに一般的なOTAにおいては差動回路に加えて4個のカレントミーラーを使用して最終出力がpush-pullの定電流出力になりますがこのdiode ringでは制御回路を除けば単純なdiode 4個の回路で push-pull動作を実現しています。 大元がシンプルなのでいかにCV制御回路をシンプルにできるかもポイントなのかも知れません。


PN接合の直列、反転接続の効果

Tr.の差動回路や上記のdiode ringのD2,D4等のペアの接続はPN接合の直列かつ極性が反転された接続であってそこに印加される信号電圧と左右のPN接合に流れる電流は特徴があります。

上記の回路が定電流源でドライブされていれば、差動回路における信号電圧の変化と左右のTr.を流れる電流の変化と同様な反応、すなわち信号電圧の上昇で左側の Diode電圧が上昇し電流が増えた分、右側のdiodeを流れる電流は同量低下するという必然から右側のdiodeに加わる電圧は低下します。

この際、信号電圧0Vから上昇変化分が右側のdiode電圧を単純に同量低下させるわけではありません。 上昇変化分が微小な範囲では同量に近い変化ですが、変化量が多くなれば左右のdiodeで動作点がより異なることになるので同量の電流の増減に対して電圧が下がるほうはより大きな電圧下降となる必然となります。 この結果、差動回路と同様電圧が上昇する側に印加されるdiodeの電圧変化の方が電圧が低下する側のdiodeに印加される電圧に対して小さい値になります。 当然のことながらこれは信号電圧の変化分に対しての分圧として両diodeにかかります。


* Tr.差動回路の印加電圧と電流の関係

上図はTr.差動回路の例ですがdiodeでも同様です。 信号電圧がいくら上昇して左側のdiodeの印加される電圧は信号電圧0V時のdiodeの動作点電圧 + 18mV以上にはなりません。  信号電圧の分圧分は右側のdiodeに逆方向にかかります。 この分圧値は両diodeの微分抵抗の差(比)を同時に反映していてそれが両者の分流比にもなっているという因果関係。

余談

* 差動回路について
* OTAについて



Diode Ring (VCA core)の電圧/電流変化のグラフ

* diode ring (VCA) 電流特性


Vsigが大きくなると出力電流は飽和に向かいます。  I3とI4は逆相になりますが、出力電流は方向がI3と同相I4の変化は出力電流方向としてはI4を反転してi3に加える形になります。 これはAUDIO信号を中心に考えた直列回路が2系統あると考えれば当然でOTAの出力などとも同様の反応。 上図の緑のカーブが出力電流特性。 それにしても差動回路を使ったVCAや OTAの特性によく似ています。

Rを流れる電流は実際は定電流源ではないので下側のRを流れる電流はAUDIO信号のプラス側増加と共に増加、上側のRを流れる電流は AUDIO信号のマイナス側増加と共に増加します。 この増加電流要素はD2に流れるAUDIO信号電流に重畳されるので実際は定電流源のようにD2電流とD3電流(もしくは位相反転したD4電流)は同じ値になりませんがDiode Ringを流れるAUDIO信号の変化分自体は左側と右側すなわちD2とD4で同じです。

VCAとして使う場合はD3とD4に流れる電流の加算値が意味を持つので左側のdiodeの電流変化とのい違いは問題になりませんが、VCFとして使う場合はD1とD2の電流変化も利用するわけで問題があるのでしょうか?。

* diode ring Diodeに印加される電圧特性


Vsigが分圧されdiodeに印加される時、順方向に電圧がかかる方のdiode は低抵抗、逆方向電圧がかかる方のdiode は高抵抗になるので分圧比は高抵抗の方が大である。  Vsigが0Vより遠くにいくにしたがって微分抵抗の比率は大差がつくのでほとんど電圧は逆方向側のdiodeにかかるため順方向のdiode D2に分圧印加される電圧変化は微小になる。

すなわち逆方向側のdiodeが高抵抗 + 正方向が低抵抗の直列回路になり抵抗の負帰還により順方向側のdiode に印加される電圧の増加は少なくなりdiodeの電圧変化は LOG特性に近くなり上記の電流特性においてVsigが0Vに近い区間ではリニアVsigが大きくなるにしたがって飽和へ向かう。 これは差動増幅の特性と酷似していますが一点の違いはAudio信号入力側のdiode D2に抵抗Rに流れる電流の増加要素がのるのでそれを発生するのに足りる電圧がD2に加算されるという違いがありD2とD4に加わる電圧は完全に対称ではありません。

* diodeと抵抗の直列、並列接続 *

電圧特性からわかることは印加信号電圧に対する抵抗の電圧変化とD4の電圧変化は逆相で変化は同じ。 これは両者が並列関係にあるからで上図はdiodeの電圧の基準点を順方向に取っていますが、電圧の基準点をD4と抵抗で統一すれば同じ変化です。 また D2と抵抗の関係については印加電圧の分圧すなわち直列関係にある。

このため 印加信号電圧がマイナス時のD2と抵抗の分圧を見ると D2の抵抗値が高い時はほぼD2に電圧がかかっており抵抗には電圧が分圧されない、逆に信号電圧がプラスの時は D2の抵抗が小さくなるので電圧は抵抗にほとんどかかっており結果信号電圧に追従してRを流れる電流は増えている。 この場合も D4と抵抗は並列関係にあるのでこの両者の電圧変化は逆相で同じ。

印加電圧がプラスの時はD2の微分抵抗がさがるので電圧は 抵抗、D4側に多く分圧され、 マイナス時はD2の微分抵抗が高くなるので電圧はほとんど D2にかかる。 このためマイナス時は抵抗の電圧変化が小さいため抵抗に流れる電流変化も小さく定電流源のように 動くのでD2、D4の共有電流はほぼ固定され特性は定電流源駆動の差動ペア的な特性となる。

逆に印加電圧がプラス時は抵抗の電圧変化が大きくなるので抵抗を流れる電流は印加電圧の変化に追従してしまいD2を流れる電流は定電流源駆動のように収束せず D4の微分抵抗が大きくなった時点ではD2と抵抗の直列接続のみが有効状態なので抵抗の電流変化とD2の電流変化は同じになる。

すなわち D4とD3の電流値が大きくなる領域においては Rを流れる電流が定電流源のようにふるまうので出力側のD4、D3を流れる電流は飽和収束する特性になる。 よって印加信号電圧の0Vを中心とした+/-の電圧変化に対する D4とD3の電流の変動幅はほぼ同じでD1とD2のようなアンバランスな特性にはならない。 何と言うかパズルのような回路ですね。 というかグラフの特性や分圧の挙動から1次のLPF/HPFの分圧反応との共通点が見出せます。

定電流源であればRの存在を意識しないでD2とD4の分圧の対応だけでいいのですがこの場合はより複雑な動作。 diode ring VCFの場合はRに相当するのがdiodeなのでより複雑です。



* 電圧波形

AUDIO信号として SIN波を印加した場合、diodeの順方向を電圧/電流の正方向に取ると、Vsigの電圧が0から+上昇するとD1とD2の接点は上がるのでD1の両端子電圧は低下し逆にD2の両端子電圧は上昇し、 D1とD2の電圧変化は逆相になります。 また D1,D3の直列回路に印加される電圧とD2,D4の直列回路に印加される電圧は同じですが上記のように逆相関係となります。 よってここではD2側の直列回路側についてまず考えます。

D2、D4と抵抗の回路をよく見ると差動増幅回路の差動ペアと同じであることがわかります。  すなわちdiodeには増幅作用が無いもののTr.のB-E間と diodeの A-K間は同じ働きをします。 Vsigの変化は D2とD4の微分抵抗の比で分圧するということです。 この場合D2とD4の電圧変化も逆相変化となり、Vsigの+上昇に対してはD2の微分抵抗が低下し、この時D4に対しては逆相で電圧がかかるのでD4の微分抵抗が増大するため分圧比がVsigの変化で刻々変化しdiodeの印加電圧変化は VsigがLOG変換される形です。

D2,D4に繋がっている抵抗のdiode側の端子は電圧変動があるので電流変動が発生しますので定電流源のように制御電流が固定でなくなり、その変動分の電流はAUDIO信号側のdiodeのみに流れます。 よってD2の電圧の変化幅の方がD4よりも大きくなります。


* 電流波形

D2,D4を流れる電流は電圧変化が基本LOG変化なので電流はほぼリニアな変化になりますが、 RとCVにより簡易定電流源が構成されるためdiodeのbias電流の2倍の値が制御電流でこれが定電流源に該当し差動ペアの電圧 - 電流特性に近い特性となります。 さらにこの回路は上下に対して差動ペアが2っつながった構造になっていますので上記の説明のように出力電流は I4の2倍すなわち I3+(-I4)となります。

上記のグラフは AUDIO印加電圧が大きい場合ですので出力電流は完全にリニアでなく飽和気味です。 これは通常の差動増幅特性と同様です。

D1,D2,D3,D4の電流波形の変化がリニアに近いのは各diodeの電圧特性がLOG特性だからです。 これは AUDIO信号の印加が片方の diodeの微分抵抗を下げもう一方の diodeの微分抵抗を上げるのでプラス方向には電圧がかかりにくくなりその分マイナス方向では電圧がかかりやすくなるという負帰還の作用によるものです。

図の電流特性は おおきめのAUDIO信号を印加した場合でかなり圧縮がかかった波形です。 AUDIO信号が小さい範囲ではリニアな波形になります。



Diode Ring (VCF core)

diode ring VCAとVCFの違いは制御電流発生用の抵抗Rをdiodeにおきかえた違いだけです。 この意味は VCAのレスポンスがリニアなのに対して VCFの方は指数特性にする必要があるため diodeを使用した anrtilog 電流源を構成するためです。


* diode ring Diodeに印加される電圧特性

こちらも本質的には VCAの電圧特性と同じなのですがポイントがいくつかあります。

1:
Vsigの上昇に伴ってD4の微分抵抗が大きくなるにしたがって印加されるVsigはVCAの場合はほぼD4に逆相でかかり D2にかかるのはわずかでしたが、この場合はかなり複雑です。 D6とD4は逆相並列接続にあるためかかる電圧変化は同じで逆相である必要があり、D4の微分抵抗が大きくなれば D2とD6はD4を無視して直列接続になるのでD2,D6の微分抵抗の比で分圧される。

D6がなければ VsigはD4に逆相でほとんどかかるはずですが上図ではその半分がD4にかかりその逆相変化が D6で、残りの半分の電圧がD2にかかるようになっています。

Vsig=0ではD2, D6に流れるCVによる制御電流の差(初期固定値)を反映して2:1の分圧ですが Vsigの増加に伴って両者の分圧比は1:1になります。 実際上は I4が飽和しているわけなのでここまでVsigを大きくすることはまずありません。

2:
D2に印加される電圧が逆方向にかかっている時(Vsigがマイナス方向)はD4が低抵抗なので分圧はほぼD2にかかります。 よってマイナス側はVCAの特性に似ています。 D4と並列の D6にも印加電圧がかかりません。


Diode Ring (VCF)の電流特性

本質的には VCAの電流特性と同じなのですが、CVがEXPO特性なのでCVの増加に対する動作点の上昇が激しい、すなわち VCAとしてのGAIN増減が激しいと同時に AUDIO信号増加時におけるD2に流れる電流とD4に流れる電流の差が激しくこれは上記電圧特性でもわかるように AUDIO信号印加に対してのBIAS電流変動分が影響していると言うことです。

Vsigが+方向に大きくなると上図でD2とD6の電流値が同じになるすなわち逆相のD4の微分抵抗が大きくなり無視できるのでVsigは D2とD6の直列回路なので同じ電流が流れる。

VCA coreの抵抗と違いA-K間に印加される電圧がリニアになり結果電流は EXPOカーブとなります。 これは D2,D6に対してであってD4に対しては影響が小さいです。 これはVCA core と同様D4の微分抵抗が小さい時は D2、D6の微分抵抗が大きくなるのでD6を流れる 電流の印加信号電圧に対する変化が小さいからです。



* 電圧波形

D6、D5に流れているBIAS電流はD1,2,3,4の2倍ですので動作点は2倍上の位置になりますので微分抵抗は 1/2になり、 AUDIO信号が0の時の電圧差は18mVでVsigがプラス上昇時D2,D6は順方向、D4は逆方向なので実質D2,D6の直列接続に対して印加される形になり、微分抵抗比により分圧します。 上記波形でもそのようになっています。 D4とD6は極性反転の並列接続なので印加電圧もそのとおりになっています。

Vsigがマイナスで下降時D2,D6は逆方向の電圧印加D4は順方向で微分抵抗小なのでVsigは D4上昇に少々分圧残りがD2に分圧されます。 この時 D6とD4の関係は逆接続で並列なのでD6のマイナス方向の電圧振幅はD4のプラス方向の振幅と同じに小さい。

結果 D2に印加される電圧波形は VCA coreの抵抗部分が diodeに変わったことで大きく異なるが D4に対しては対して変わらない。

ここで同じ diode ringを構成する要素なのにD2とD4の電圧波形があまりに違いすぎるのが不思議に思えたりします。 VCAの場合は 最終的な出力が D3とD4を流れる電流なので良いとしても VCFの場合はD2と D4を流れる両電流を利用するわけで電流発生の元はこれらの電圧変化です。 はたしてにだいじょうぶなのかと思ってしまいます。

この問題は上記のようにD2に流れる電流は diode ringに流れる電流プラス、制御電流すなわちD6に流れる電流との和なので電圧変化もそれを考慮した変化になります。

D2に流れるdiode ring本来の電流はD3と同じなのでD2電圧変化からD3電圧変化を引くと D6のBIAS電流変化にかかわる電圧が現れます。

上図においてBIAS電流の変動分はbias(白色のグラフ)となり印加電圧の 1/2の変化となります。

  I2-I3 = diode ring 本来のD2に加わる電圧変化 = D4の電圧変化と同じ量

となり電圧の静特性におけるD6のグラフと同じ結果になります。

よって本来の D2とD4の電圧変化は逆相ですが同じ変化となります。 上図の場合は制御電流発生用のD6とD4は並列接続ですので変化の大きさは同じになっていて逆相で動作点が Vsig=0の初期値での電流差2倍を反映しています。 すなわち D2、D4、 D6の波形の変化の形は逆相、正相の差はあれどみな同じ結果になっています。 

制御電流が定電流源であればD2とD4の接点電圧は変動するがこの電流変動は起きないわけです。 またD2とD4は抵抗であれば直列接続なわけですから両diodeを流れる diode ring本来の電流変化は同じでなくてはならないわけです。


* 電流波形

D2の電圧変化からわかるようにD2の電流波形はEXPO特性が出ている形、 D4, D6の電圧波形は位相の異なる同じ波形であるがD6はバイアスレベルが高く、プラス変化部分はD2の変化と同じような電圧なので電流波形も同じような形。 D2とD6の電圧波形変化に対してマイナス方向は電圧変化がより大きくないと電流変化に反映しなので両者の電圧変化ほどは差がつかない。

D4電圧波形はLOG変化ぎみなので電流波形はリニアに近い変化となっています。 D2に流れる電流はdiode ring本来の変化と CV変化が重畳されているのでD2 - D6の電流変化が D2に流れるdiode ringの本来の電流変化でそれはD4の電流変化と逆相で値は同じになり、これはD3に流れる電流に等しいです。

電流変化の静特性のグラフからVCAの場合ほどD3、D4電流波形の直線性はよくなくI4単体では直線性を保てる範囲はほんの少しですが最終出力電流は逆相の反転成分を足した I3+ (-I4)になるのでかなり改善されます。

50mV-ppくらいが直線性がよいか。



* 小信号入力時の反応

上記のグラフは動作を理解するためにAUDIO信号をかなり大きくした場合(200mV-pp程度)の例ですが実際の使用法においてはMS50のVCFではAUDIO入力が3V-pp MAXとなっておりdiode ringの入力で約1/100の減衰させているので実際は30mV-pp程度となります。 以下に30mV-ppのSIN波を入れた時の波形グラフを示します。

左側が電圧の波形、右が電流波形です。 電流波形において緑の波形が電流出力波形です.



* Diode Ring によるVCFの構成

上記の例で D2と D4に流れる電流の形に大差があることがわかりましたがこれはD2を流れる電流は diode ring本来の電流と制御電流の変動分が重畳されたものだから実際はI2とI4は逆相で変化波形は同じものと書きましたが感覚的にはわかりにくいので以下の例します。


左の図においてdiode ring部分は上下の回路は同じはたらきの回路です。 すなわち抵抗の回路において両抵抗は直列接続ですので流れる電流は両抵抗で同じもであるから上のdiode ring回路もD2とD4を流れる電流は同じものでなければなりません。


右の回路は 2次のpassive LPFを表しています。 下の抵抗と capacitorの LPFをdiode ring 回路で構成すると上のようになります。 1段目の capacitorは制御電流用の diodeD5とD6と並列位置におかれています。 2段目のcapacitorは1個ですがこれは最終出力はD3とD4の電流がMIXされひとつになっているのだから当然で1段目はまだMIX以前だからそれぞれの回路に1個づつ計、2個必要です。

ここで 制御電流用の diodeに並列に caoacitorが付く形になるが制御回路に干渉しないかという問題があります、 これについては capacitorは基本直流である制御電流は流入しないから影響無いということになると思いますが、 bias回路は定電流ではないので Vsigの変化に対して電流の増減があるわけで..この部分はいかに?.。

上図には少々うそがあります。 正確には bias用の diodeも考慮しなくてはならないので以下のようになります。 diode ring VCAに比べて VCFはかなりやっかいです。



* 1次LPF

上図の回路の1次filterでで Vsig=2KHzを印加した場合 capacitorC1の電流値と抵抗R2の電流値が同じになれば cutoff=2KHzとなります。 この回路を diode ring で表現すると以下のようになります。


Vsig=0Vでbias回路のdiodeには初期電流が発生し Vsigの変化とともにその電流は増減します。 capactorがdiodeと並列に付いても bias diodeに流れる直流電流はcapacitorが無いときと変わりません。

一方D2の電流から bias回路に流れる電流を引いた値はcapacitorがなければ D4に流れる電流と逆相に電流でcapacitorがあることによってD4の微分抵抗とcapactorのインピーダンスの比で分流します。

またcapactorが付くとbias diodeに流れていたbias電流の変化分は bias diode D6の微分抵抗とcapacitorのインピーダンスによって分流します。 よってD2を流れる本来のdiode ringの電流が Cap.とD4に分流、さらにD6に流れるbias電流の変動分も Cap.とD6に分流すると考えればよさそうですので cap.に流れる電流は両者の分流分者の合成電流となる。

上図の電流波形はAUDIO信号が小さい時のケースですのでbias電流の変動要素はほぼ現れていません。


次に電圧波形を見て見ます。

図のように電圧方向を定義するとcapacitorと D4と bias diodeは並列接続になるためすべて同じ電圧波形となります。 上記のグラフは AUDIO信号が小さい場合(30mV-pp)の例 なので詳細がよくわかりません。 それが大きい場合はどうでしょう。 300mV-pp時の波形を以下に示します。



Overdrive 電圧波形

これは 上の方に示したdiode ring VCF 電圧波形(oberdrive)の時の波形と同じように見えます、 さらにこの時の電流波形は以下のとおり。


Overdrive 電流波形

D4の電流波形はさほど歪みませんが capacitorに流れる波形は大幅に歪んでいます。   このグラフ波形は capactorのインピーダンスとdiode D2,D4の微分抵抗が同じ値の時のものです。 よって diode ringそのものの電流は D2を通過して同量がcapacitorとD4に分流しさらに、bias電流の変化分も D6のbiasの diode のみならず capacitorにも分流します。 この際 D6の微分抵抗は D2.D4の半分さらにはcapacitorのインピーダンスの半分です。

ここで capacitorに流れる電流は bias電流と diode ringとしてのD4との分流分となりますが両者で位相差がありますのでこれらを加算すると上記のような歪んだ波形が発生してしまいこれは両者のミックス値によって異なる波形になります。

Cap.の電流波形はかなり変な形に歪んでいますがCap.の両端子電圧は上記の電圧波形でbiasのdiodeと同じですからこれはよくある歪んだSIN波で上図のD2を流れる電流波形(電圧波形ではない)と同じ形です。  Cap.の電流波形を積分すると普通の歪んだ波形になるということです。

上記の例は 1KHzのSIN波を入力しておりその時の Fc=1KHz時の波形ですがかりにFcを大幅に低くすれば D2を通過した電流は bias, diode ring 電流ともに capacitorのみに流入するので波形はこのような波形でなく EXPO SINになり、 また Fcを大幅に高くすれば capactorのインピーダンスが高くなり capacitorが存在しないのと同じ電流波形になります。

D4を流れる電流波形のおいては複数の経路のMIXは無いので capactor電流波形ほど歪んだ波形にならずさらにD3の電流波形と逆相 MIXされるため非対称歪みもなくなります。 すなわち D4を流れる電流はbias電流の影響を受けないのでdiode ring 出力にさらに capacitorを繋いで 2次LPFにした場合もbias電流よる歪みはないということになります。

もちろん1次LPFの capacitor端子から電流をとれば歪んだ波形になってしまいますがここから出力電流を取ることはないでしょう。 上図の1次LPFにおいては Cap.とD4は並列接続ですから電圧波形はD4の電流波形と同なのでこのようには歪みません。 それ以前にここまで大きな信号をいれることはないでしょう。

S&K filterとして filter出力を正帰還させる場合はcapacitorを介してD5, D6に信号を戻すため AUDIO信号がおおきければなんらかの影響がありそうですが?。



初段のdiodeの微分抵抗は後段のdiodeの微分抵抗の 1/3

bias用のdiodeに並列に capacitorが付くと回路がたいへんわかりにくくなります。 幸いこの回路は変形可能です。 以下に diodeの微分抵抗を単純抵抗に置き換えた回路を示します。

印加される信号電流の振幅が小さいという前提で、上図のようにD2とD6の diodeの直列分圧回路を2者の並列に置き換えて最後のfilter出力でGAINを1/3にすれば元の filterと全く同じ特性になります。 実際上は filterの特性が同じであればいいので GAINを下げる必要はないでしょう。

diode ringはD2とD4が同等な構造になっていますが bias用の antilog diodeの影響でこの diode ring VCFにおいては 1段目と2段目の微分抵抗が同じ値にはならないというのが大きな特徴となります。 このアンバランスをさけたければ定電流源で駆動すればよいのでしょう。 YAMAHA の diode ringは定電流駆動のようです。

抵抗値がアンバランスですが capacitorの容量は2者で同じであるためこの2段LPFは故意にFcをずらして Fc付近の肩特性を改善するタイプです。 さらにKORG700等の filterは S&K LPFなので上図のように出力を1段目の Cap.に戻します。



<2018/09/25 rev0.4>
<2017/12/30 rev0.3>
<2017/08/13 rev0.0>